派遣薬剤師の働き方のメリットとデメリットを考える
派遣薬剤師に興味はあるけど、実際どんなメリットやデメリットがあるのかを直接聞いたことがある人は少ないと思います。
この記事では、るろうに薬剤師が自ら経験の基づきメリットとデメリットをはっきりとお伝えします。
- 派遣薬剤師のメリット
- 人間関係を我慢することが少ない
- 残業がほぼ無い
- 薬局の閉局時間を待たずに終業できることが多い
- 時間外の委員会やプロジェクトに駆り出されない
- 基本的にノルマはない
- かかりつけ薬剤師
- 各種資格要件取得
- 働き方を定期的に見直せる
- 本社がうるさくない
- 派遣薬剤師のデメリット
- 案件が見つからない
- ギリギリまで案件が決まらず予定が組みにくい
- 最終的に仕事にあぶれて無職状態になることがある
- 正社員に比べて、年収を上げにくい
- 案件が見つからない
- メリット、デメリットをどのように考えるか
派遣薬剤師のメリット
1.人間関係を我慢することが少ない
薬局は少人数のスタッフが一つ屋根の下で力を合わせて業務を行うというお仕事です。
家族よりも長い時間を薬局のスタッフと共に過ごします。
うまくいっていない薬局では人間関係のストレスが非常に大きいです。
そんな働く上で重要な人間関係ですが、派遣薬剤師では、人間関係で我慢することが少ないです。
それは以下の理由が大きいです。
「異動」は社員だと難しいが派遣だと簡単
薬局の雰囲気は、薬局長の人柄に左右されるところが大きいですが、ギリギリの人員配置の場合、どうしても余裕が無く、みんなギスギスしがちです。
正社員の場合には、配属先の店舗の雰囲気が最悪で、耐えられないと思ってもそう簡単に異動はさせてもらえません。
一方で派遣であれば、「嫌なら契約更新しなければいい」だけです。派遣薬剤師の契約期間は2-3ヶ月と短期間が多いので、我慢する期間は短いです。
個人的な感覚ですが、2ヶ月もあれば、薬局の雰囲気や、各スタッフのキャラクター、業務負荷などは把握できるので、契約を更新をするかどうか迷うことはほぼ無いです。
派遣薬剤師は他社の人
自分以外の薬局スタッフにとって、派遣薬剤師は「社外の人間」です。
したがって、派遣薬剤師も派遣先のスタッフも一定の距離感をもって接します。
そのため、むやみに冷遇したり、礼を欠いた対応がされることは稀です。
もちろん、派遣薬剤師側もあいさつや返事、分からないことは確認するなど礼節をもち、丁寧な対応を心がけるのは当然のことです。
たまにとてもよい関係となり、派遣期間終了後も一緒に飲みに行ったり、よい関係を築ける方々に出会うこともあります。
ありがたいことです。
そもそも忙しい店舗だったから派遣薬剤師が来ている
当然ながら、派遣薬剤師は人員が足りていない店舗に派遣されます。
派遣先は、今少ない人数で残業したり、昼休みを削ったりしながらなんとか業務を回していた店舗のはずです。
そんな時に、手伝ってくれる派遣薬剤師が来たらどうでしょうか?
「助かったー!」という気持ちではないでしょうか?
もちろん、そのようにポジティブに受け取ってもらうためには、派遣薬剤師も即戦力としてのスキルがあることは言うまでもありません。
2.残業がほぼ無い
医療業界は残業がつきもので、拘束時間が長いのが常。
そんな仲でも派遣薬剤師という働き方は残業がほぼありません。
それの理由を説明します。
薬局の閉局時間を待たずに終業できることが多い
派遣薬剤師は就業時間をあらかじめ契約で決めています。
- 月火水木金
- (就業時間) 9:00 ~ 18:30
- (契約時間)8時間
- (休憩時間)90分
- 8時間以上の部分 +25%、休日出勤 +35%、深夜勤務+25%
これだけみると正社員やパートの薬剤師と同じです。
しかし、派遣費用が5,000円/時間 を思い出してください。
完全に25%もしくは、35%増しになるかはわかりませんが、残業となれば当然派遣会社の取り分も増えることは容易に想像できます。
基本の派遣費用5,000円の25%増しであれば6,250円/時間、35%増しであれば、6,750円/時間となります。
したがって、「派遣薬剤師を残業させると高いから、派遣さんには定時で上がってもらって、残業は社員でやってください。」
と派遣先の社長や人事から指示が下ることがほとんどです。
その結果、派遣薬剤師は残業がほぼない、という状態になります。
※しかし、完全に定時で上がる!ということを最優先していると、現場のスタッフとうまくいかなくなることがあります。終了間際に薬局が混雑した時など数分であれば、私は残業はつけずに片付けてから上がります。
3.時間外の委員会やプロジェクトに駆り出されない
薬局業界においてよくある会議や、委員会活動は店舗を閉めた後など時間外に行われることが多いです。
会社によって、呼称は「委員会」だったり、「プロジェクト」だったり様々ですが、内容はほとんど同じだと思います。
よくある会議や活動として…
- 薬局長会議:全社的な方針の伝達
- 学術委員会:社内の学術的な質問を受け付ける窓口
- 実務実習委員会:薬学生の実習の計画、段取りをする
- OTC委員会:市販薬や医療資材など薬局の物販の販売促進策を考える
- 在宅委員会:全社的に在宅業務を推進する手立てを考える
などがあるでしょう。
2.と関連しますが、これも派遣薬剤師の高い人件費を使ってまで、手伝ってもらう必要はないので、駆り出されることはまずないです。
しかも、店舗外で会議するとなると契約外となり問題が生じるのでその点でもあり得ません。
もちろん、これらの活動で得られる経験も大きいので、社員であれば一度は何かしら経験しておいたほうがいいとは思います。
4.「かかりつけ薬剤師」や、各種資格の取得義務がない
「かかりつけ薬剤師」になることはまずない
派遣薬剤師は、「かかりつけ薬剤師」の前提となる勤務期間に到達する前に店舗を離れることが多いので、「かかりつけ薬剤師」になることはまずないです。
かかりつけ薬剤師の要件となる在籍年数:1年以上
ただ、店舗内の「かかりつけ患者さんを持っている薬剤師」の休んだ時の対応や、かかりつけ薬剤師制度自体の説明などはできる必要があります。
研修センター認定薬剤師などの資格取得は求められない。
「日本薬剤師研修センター認定薬剤師」も派遣薬剤師として業務を行うだけであれば、取得して更新していく必要はないです。
しかし、資格自体は不要といっても、派遣薬剤師も他の薬剤師と同様、継続的な勉強は必要です。
私は派遣会社の福利厚生でe-ラーニングを受けられるので、定期的にコンテンツを見て単位は集めています。
5.働き方を定期的に見直せる
私自身はこれが最大のメリットと感じています。
派遣薬剤師はライフステージやプライベートによって柔軟性のある働き方が可能
派遣薬剤師は、契約時に働く曜日と時間を予め決定します。
したがって、派遣先が変わるタイミングで働く曜日や時間数の希望を伝えて仕事の負荷を調整できます。
一応、更新時にも時間の変更はできるようですが、私は経験がありません。
仕事が最優先にできない時もある
誰しもプライベートの状況によって、仕事の優先順位を下げたい時があると思います。
子育て中の薬剤師であれば、ラストまでの就業が難しい、預け先の確保が難しいので土曜日は休みにしたい、など色々な事情があります。
時短勤務が終了したタイミングで、正社員薬剤師からパート薬剤師に切り替わる人は多いですよね。
異動できる薬局があればいいものの、パートでの就業を会社から渋られたり、遠くの店舗の配属となったりと、社内の薬剤師の配置状況に左右されるのが難しいところ。
派遣薬剤師であれば、こちらの条件を出した上での交渉になります。
案件次第ではありますが、交渉によりある程度は融通が効きます。
るろうに薬剤師の場合
私は月曜から土曜日まで薬局に拘束されて、自由な時間が持ちづらいのが嫌でした。
退職時点では以下のようなことを考えていました。
- 旅行やキャンプ、スノーボードなど趣味の時間をしっかり確保したい。そのために土日祝日休みとしたい。
- 副業をするための時間を確保したい。
- 学校へ通って薬剤師以外のスキルを身につけるための時間を確保したい。
- 土曜日に子供の習い事の送迎があるので、仕事を入れたくない。
現状ほぼ思い描いたような働き方ができています。
ただ、状況も定期的に変わるので、数ヶ月おきに自分の状況にあった働き方ができるのでありがたいです。
6.本社がうるさくない
薬局業界は規制の厳しいビジネスということもあり、店舗ごとに仕事をしつつも、やたらと社内規則が多かったり、本部が色々と口出しをしてきます。
必要なものもありますが、必要性の薄い指示もたくさんあるので、正社員時代、非常に苦痛でした。
派遣薬剤師であれば基本的に蚊帳の外なので、これらの面倒な社内規則とは無縁です。
もちろん調剤内規など薬局ごとの決まり事は守る必要があります。
副業が自由
人手不足の時代、副業が一般的になってきました。
私個人としては、本業に迷惑をかけない範囲で副業を行うのは全く問題ないし、新しいスキルを獲得できてメリットが大きいと思います。
ところが、薬局業界では、就労規則で「副業禁止」を掲げる企業が多いです。
私が見聞きした例として以下のようなことがありました。
- パート薬剤師が、空き時間に知り合いの薬局を手伝おうとしたら禁止された。
- スキーのインストラクターの資格を持っている方が、週末にインストラクターとして仕事したいと申し出たが却下され、無給でボランティアとして教えることになった。
- 医療事務が薬局外で仕事する際、個人事業ならOKだが、雇用されて仕事をするのはNGと言われた。
- 学校薬剤師、市医師会の運営する急患センターでの出務も会社の許可が必要。
複数の薬局で仕事していると、保険薬剤師の登録などで保健所への申請状況と齟齬が出る可能性があります。
本社が嫌がるのはそういうことで保健所や厚生局から目をつけられたくないからでしょう。
しかし、薬局と関係ない副業に口出しされるのは全く理解不能です。
もちろん、副業の負荷が大きくなってしまって、本業に影響が出てしまうとそれは問題ですが、きちんと本業のパフォーマンスを保てていれば、口出しされる筋合いはないと思います。
派遣薬剤師はどうかというと、派遣会社やエージェントはきちんと働いていれば、全く口出ししません。
もちろん、派遣先の薬局からも、自社の社員ではないので口出しされることはありません。
「いろんなことやっているんだね。」でおしまいです。
薬局の開局時間時間の縛られなくていい
門前のクリニックの先生が、休診になったり、診察時間を短くすることが時々ありますよね。
有給があれば有給休暇、なければ欠勤にしてしまいます。
派遣薬剤師としては、契約時間内なので、時給をもらいながら、薬局でのんびり過ごしてもいいわけです。
しかし、私は無駄に薬局にいるのが嫌いなので、薬局長と相談して休みや、早退にしてしまいます。
受け入れ薬局から見れば、派遣薬剤師は人件費が高いため、帰ってもらったほうがありがたいのです。
事前にエージェントに連絡して、しかるべき手続きをしておけばペナルティは何もないです。
時給がさがることもありません。
どのような時か例を挙げると以下のような状況です。
【年末年始やお盆】
お盆や年末年始、クリニックは長くお休みしているのに薬局だけ休まずに開局したりします。
これは、地域支援体制加算が大きく影響しています。
9時間開局していて、処方箋枚数が数枚とか。
これは大体本部の指示で、厚生局に届け出ている日時、時間帯は空けておきなさいっていわれます。
面薬局として地域医療に貢献する、という考えはわからないではないですが、現場としては休みたいですよね。
【門前の先生の学会出張や個人的な用事】
これもよくあります。
クリニック側には自分の都合が悪い時に診察しなくても特段ペナルティはないので、先生の都合によって休むのは自由です。
でもそんな時でも薬局は、届け出ている時間を開局していなければいけません。
派遣薬剤師のデメリット
「派遣薬剤師」という働き方が気になっている薬剤師の方から、「派遣薬剤師のデメリットって何?」と直接聞かれたことがあります。
SNSなどでメリットについては多く発信があるものの、確かにデメリットについては発信が少ないです。
派遣薬剤師として様々な薬局を渡り歩く るろうに薬剤師 がデメリットの実際のところを忖度なくお伝えします。
案件が見つからない
デメリットは「案件が見つからないこと」に尽きます。
SNSの広告では、「派遣薬剤師だから〜土日休みで〜時給も3200円だから、欲しいものも買えるし〜♪」という広告が流れていますが、実態は厳しいです。
2~3ヶ月ごとの契約更新時期は更新があるのか、別の案件がちゃんとあるのか、それなりに気になります。
最終的に案件がなくて無職となることがある
「案件がなければ、薬剤師免許証を持っていても、ただの無職の人」です。
派遣する薬局がなければ、派遣会社の社員で居続けることはできません。
派遣会社の社員の身分を失うと、以下の事態となります
- 派遣期間がどんなに長くても、一度「退職」扱いとなる
- 保険証は退職翌日に返却しなくてはならない。