派遣薬剤師の時給事情

派遣薬剤師の時給・年収はいくら?正社員やパートとの比較

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薬剤師の転職支援サービスに登録すると、毎週のようにメルマガが届いて、「高額派遣!時給5,000円!」などという踊り文句を目にしますよね。

あれって本当なのだろうか?と気になりますよね。

このブログをを読んでくださる方で、最も気になるであろう派遣薬剤師の時給・年収事情について、るろうに薬剤師(派遣薬剤師として絶賛お仕事中!)が実情をお伝えします。

目次

相場は薬剤師確保の難易度によって上下

昨今の人で不足のニュースを見ていてもわかるように、目的とするスキルを持っている人が希少なほど給与水準は上がります。

地域が異なれば薬科大学の有無などにより、薬剤師の確保の難易度は上下するので、相場も変わってきます。

「薬剤師確保の難易度」はどんなところで決まるのでしょうか?

  • 県内の薬科大学の有無
  • 地域の田舎具合

特に「薬科大学の有無」の影響が大きいです。

新潟県は新潟薬科大学があり、毎年薬剤師がコンスタントに排出されてくるという県です。

また、関東から上越新幹線で一本、高速道路のアクセスもよいです。

したがって、「薬剤師の確保が極端に難しい地域」ではありません。

それゆえ、派遣の案件の数は少なく、時給も普通くらいの相場です。

一方で、お隣の山形県は薬科大学がない県です。

ちょっと山形に足を踏み入れると相場感が変わってきます。

交渉次第ですが、3,000円台後半〜4,000円も狙えそうです。

新潟県においては、時給3,000円が1つの目安

そのような「普通くらいの相場」の新潟県において私が過去に提示された時給を並べてみます。

  • 2024年提示の案件
    • 2,700円 月曜日〜金曜日 フルタイム
    • 3,000円 週3日 シフト制
    • 3,000円/時 月曜日〜金曜日 フルタイム
  • 2025年提示の案件
    • 3,600円/時 月曜日〜金曜日 フルタイム

3,600円/時 の案件は私が以前に正社員だった薬局のため、即戦力としての上乗せをしてもらっての金額です。運の要素が大きいです。

※以前に従業員として勤めていた会社に派遣される際には一年以上経過している必要があります。

私は、派遣案件として紹介されるのは通常3,000円くらいが上限と考えています。

この5,000円/時というのがキリのいい金額で、交渉する際の目安なのだと思われます。

派遣薬剤師の取り分が3,000円/時で、派遣会社の取り分が2,000円/時、合計5,000円/時が薬局から派遣会社に払う「外注費」になるからです。

この派遣会社の取り分は「マージン」と言われ、大体30~40%くらいです。

事務職やデザイナーなど薬剤師以外も含めた派遣業全体で見ると30%くらいという報告がありますので、薬剤師派遣はややマージン率が高い派遣といえそうです。

なんで3,000円/時なのか考えてみる

派遣会社のエージェントが薬局に話をする時の状況を考えるとよくわかります。

パンダ薬局 人事課
パンダ薬局 人事課

薬剤師が集まらない…。

正社員がいいけど、見つかるまで派遣をお願するパン…

エージェント猫
エージェント猫

いい考えですにゃ!

派遣薬剤師でつなぎつつ、正社員薬剤師を探してみましょうニャ!

パンダ薬局 人事課
パンダ薬局 人事課

派遣費用っていくらくらいだパン?

エージェント猫
エージェント猫

目安として、大体5,000円/時間くらいですニャ!

パンダ薬局 人事課
パンダ薬局 人事課

な、なるほど…結構高いんだパン…

エージェント猫
エージェント猫

正社員の薬剤師でも、社会保険料や退職金、福利厚生費合わせると時間単価は4,000円はこえてくるにゃ。

考え方次第ですニャ!

パンダ薬局 人事課
パンダ薬局 人事課

確かに…うちの使えない薬剤師にもそれくらいのコストはかかっているな…

エージェント猫
エージェント猫

ホントはもっと高く契約したいけど、5,000円が限度っぽいニャ。

薬剤師さんの取り分3,000円、うちの会社の取り分2,000円で手を打つニャ。

という感じで、厳しい薬局の台所事情でもギリギリ出せる金額が5,000円/時間です。

派遣を使ったことがない薬局さんだと「5,000円!?無理!高すぎ!」と考えやすいですが、5,000円の派遣費用でも薬剤師に支払われる時給は3,000円程度です。

時給3,000円での年収は?

さて、時給3,000円が目安とわかったところで、年収はどれくらいになるか計算です。

1年間は365日÷7=52.1 ですから約52週です。

したがって、週休2日とすると、週休の数は2×52=104日

祝日は年間に16日あり、さらに年末年始を5日加えると125日となります。

よって、365-125=240 240日が就労日数です。

1日8時間働くとすると、240×8=1920(時間)

1920(時間)×3,000(円/時)=570(万円)

派遣薬剤師を残業させると、薬局から派遣会社への外注費は6,000円/時を超えてきますので、とても高いです。

そのため、残業なしの契約がほとんどです。

まとめると、時給3,000円の契約が1年続けば、ノー残業で570万円ほどの収入となります。

地域によりますが、30代の正社員の薬剤師とほぼ同程度と思います。

残業や在宅業務、委員会や薬局外活動、緊急電話の当番などが免除されて570万円の年収なら、魅力的な金額だと思います。

時給4,000円~5,000円という高額な時給は可能なのか?

時給4,000円や5,000円はかなり難しいです。

私も新潟県内の派遣案件で4,000円以上は経験がありません。

自宅から通える範囲で派遣を探す、という探し方では引き当てるのは難しいでしょう。

なぜ4,000円を越える高額派遣が難しいのか検討してみます。

高額時給が難しい理由1 | そもそも派遣を使ったことがない薬局が多数

上記のパンダ薬局人事とエージェントの会話 にもありますが、そもそも派遣を使ったことがある薬局は地域によっては少数派です。

そのため、1時間あたりの派遣費用の相場がわからない薬局さんが多いです。

どうしても自社の勤務薬剤師の時給を基準に考えやすいです。

例えば、中〜大規模のチェーンであれば、ざっくりこれくらいの相場だと思います。

  • パート薬剤師の時給 | 1,800〜2,500円/時
  • 社員薬剤師の時給 | 2,300円〜3,000円/時
  • 管理薬剤師の時給 | 2,800円〜3,500円/時

このような事情が頭に入った上で、エージェントと話をして

派遣薬剤師の派遣費用 | 5,000円/時〜

という条件を示されると、この数字が5,500円になったり、6,000円に上積みされるというのはかなり厳しいことがわかると思います。

基本的には派遣費用が上積みされないと、派遣薬剤師の取り分は増えません。

もちろん、自社で雇用している薬剤師には、時間あたりの給与以外にも、有給休暇分の給与、社会保険の会社負担や退職金、教育研修費などかかるので、上記の金額よりはもっと高いはずです。

しかし、どうしてもわかりやすい金額同士で比較してしまう認知バイアスが生じます。

そのため、薬局側には、「できるだけ安く派遣してもらいたい」という思いがあるので、派遣会社の最低価格の5,000円(薬剤師の取り分が時給3,000円)に落ち着くと考えられます。

高額時給が難しい理由2 | 薬剤師に対して案件が少ない

私がお仕事を頂いている新潟県においては、派遣で稼働している人数に比べて案件の数がさほど多くありません。

取り合いというほどでは無いですが、選べるほど多くの案件はないです。

10年くらい前から派遣薬剤師の案件を追っていますが、なかなか増えません。

したがって派遣費用の上昇圧力は働きにくいです。

これは都道府県の薬剤師の需給状況と派遣での就業を希望する薬剤師の数によって決まります。

では、派遣案件が多い地域で時給があがるかというと、そうではありません。

例えば、関東圏では時給が低く2000円台前半〜半ばが多いです。

高額時給が難しい理由3 | 薬局業界の利益が厳しくなっている

毎年実施される薬価改定や2年に一度の調剤報酬改定で薬局の利益確保はどんどん厳しくなっています。

当たり前なのですが、派遣薬剤師は、薬局の管理者、つまり管理薬剤師の指示の元に業務を行います。

つまり、制度上1人では仕事をすることができません。

店舗には管理薬剤師や事務員もいて、彼らのお給料も払わなくてはなりません。

「人手は欲しいけど、使えるお金はかなり厳しい。」という台所事情があります。

そのため、派遣薬剤師だからといって報酬を引き上げる力が働きづらく、派遣会社の最低費用の5,000円/時間である時給3,000円になりやすいのです。

正社員やパートタイムの薬剤師と比較して年収はどうなるか

派遣薬剤師は年収だけを考えるとメリットはあまりない、と個人的には思います。

そうは言っても、気になる方も多いと思うので正社員の薬剤師、管理薬剤師、パート薬剤師など直接会社に雇用されている薬剤師と年収を比較してみます。

正社員(管理薬剤師)の場合

勤続年数がそれなりにある管理薬剤師であれば、派遣薬剤師よりも年収が高いでしょう。

一般薬剤師と比べて管理薬剤師の業務量、業務時間は総じて長いので当然といえば当然です。

10年~勤務している30代以降の管理薬剤師であれば年収600万円を超えている方も多い印象です。小規模なチェーンであればそれ以上もいます。

一方の派遣薬剤師は、案件次第で、一時的に600万円を稼ぐことは可能だと思います。

しかし、地域性やタイミングに大きく左右されます。

継続的に毎年600万円以上を稼ぎたいのであれば、複数県で高額案件を探し、案件ごとに引越しをしていかないと難しいでしょう。

正社員(勤務薬剤師)の場合

正社員の一般薬剤師であれば、派遣薬剤師のほうがやや高い印象です。

勤務薬剤師の年収を500万円とすると、残業なしで約2,600円です。

地域によりますが、薬剤師がそれなりに不足している地域では2600円以上の案件はあると思います。

しかし、勤続年数が長く昇給を重ねたベテラン薬剤師では派遣薬剤師よりも年収が高くなる可能性があります。

パート薬剤師の場合

パート薬剤師との比較であれば、派遣薬剤師のほうが高いことがほとんどでしょう。

大手チェーン、中規模チェーンでもパート薬剤師の時給は相当抑えられていて、関東では時給2,000円以下も珍しくありません。

パート勤務ということで扶養範囲内という方もそれなりにいるので、時給よりも勤務時間を重視している方が多いためと思います。

パート薬剤でも、ドラッグストア系、例えばウエルシア薬局などで2,600円などありますが、多くの人が働きたい日中の時間帯には空きがほとんどなく、募集もありません。

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