派遣薬剤師のスキル

未経験で派遣薬剤師は可能なのか?現役の派遣薬剤師が解説

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自由な働き方と比較的高い時給が魅力の派遣薬剤師。

派遣薬剤師で稼動している薬剤師の多くは調剤薬局の経験者です。

では、派遣薬剤師は未経験でも可能なのでしょうか?

派遣薬剤師として色々な薬局を渡り歩く、「るろうに薬剤師」が検討してみます。

目次

派遣薬剤師の案件のほとんどが調剤薬局

薬剤師の求人サイト、例えば、ファルマスタッフ(メディカルリソース)、ヤクジョブ(クラシス)、リクナビ薬剤師などを見てみます。

「就業形態」を「派遣薬剤師」として案件を検索してみると、ほぼ調剤薬局の案件しか出てきません。

検索で表示される案件は、現在、派遣依頼が終了しているものも多数含まれているものの、エージェントから送られてくる案件もほぼ十中八九が調剤薬局であり、似たようなものです。

したがって、「派遣薬剤師をやるのであれば、調剤薬局に派遣される」と考えて差し支えありません。

薬剤師の求人サイトで表示されるのが調剤薬局ばかりなのは以下の理由からです。

  • 病院薬剤師→病院という医療機関に薬剤師を含む医療職を派遣することは原則として、派遣法で禁止されているため。
  • 卸の薬剤師→基本的に麻薬や向精神薬などを在庫管理する管理薬剤師なので、派遣労働者に任せることはまずない。
  • 製薬企業のMR→派遣のMR(コントラクトMR)という職種はあるが、薬剤師免許が必須ではないため、MR専門の紹介会社が案件を持っている。

派遣を依頼する薬局のニーズ

薬剤師の求人サイトでの派遣案件は調剤薬局のものであることはわかりました。

そもそも、薬剤師の派遣を依頼する薬局側のニーズはなんでしょうか?

  • 急な欠員が出て、とにかく薬剤師を確保したい!
  • 社員の薬剤師を採用できるまでの間、派遣薬剤師で時間を稼ぎたい。
  • 常時薬剤師募集中。全社的な薬剤師の人数が足りないので、薬剤師の人数を増やしたい

急な欠員が出てとにかく薬剤師を確保したい!

勤務している薬剤師がやむを得ない事情により現場を離れる場合です。

会社が嫌になって辞める、というよりも時間の余裕がなく、慰留の余地がないことが多いです。

  • 薬剤師自身の健康上の理由
    • 手術や治療のため、入院や療養が必要になった。
  • 薬剤師の家族の理由
    • 家族の転勤について行くことになった
    • 家族の介護が必要になり一旦仕事をはなれることになった。

当然、募集して薬剤師を採用する時間もないので、派遣で薬剤師を依頼するという判断になりやすいです。

時間的余裕もないので、割ととんとん拍子で派遣が決まりやすいタイプの案件です。

療養していた薬剤師が戻ってきたり、別の薬剤師の手配ができると契約期間を持って派遣終了になります。

一方で治療が長引いたり、他店から薬剤師を移動したり、採用できないと更新が続くこともあります。

社員の薬剤師を採用できるまでの間、派遣薬剤師で時間を稼ぎたい。

薬剤師の募集をかけているけども集まらない場合です。

  • 薬剤師が退職することがわかっていたが、退職日までに薬剤師を確保できなかった
  • 新店舗を作ったが、他店舗から移動させる薬剤師が足りない。

当然ながら、労働力に対してお金を支払うので、未経験で薬剤師スキルがなければ、受け入れるメリットはありません。

「派遣薬剤師」がどのようにみられるか。

次に理解しておくべきことは、自分が派遣薬剤師として求人サイトに登録した場合、「派遣先の薬局にどのような人材として紹介されるか」です。

受け入れる薬局側は派遣労働者の履歴書を含め、氏名や個人に関わる情報を事前に知ることができません。

面接も禁止されています(見学という建前は可)

事前に知ることができるのは、その薬剤師のスペックだけです。

何人かの薬剤師さんの例を考えてみます。

調剤薬局経験8年 | Aさん(30代女性)

  • 【経験年数】調剤薬局8年
  • 【経験診療科】小児科・内科・精神科
  • 【勤務の希望】平日のみ

派遣を依頼した薬局に名前を伏せた形で上記のような派遣薬剤師の情報が伝達されます。

それを受けて受け入れる薬局側で検討をします。

パンダ薬局社長
パンダ薬局社長

内科・小児科もやっているから、一般的な薬の知識は問題ないだろう。

精神科やってるくらいだからコミュニケーションもきっと大丈夫。

平日だけの勤務だけど、あとは社員でなんとかできるね!

家庭とのバランスのため、平日のみという条件をつけていますが、調剤経験も十分なので問題なくOKがでそうな薬剤師さんです。

病院5年 調剤薬局10年 | Bさん(40代男性)

  • 【経験年数】病院薬剤部5年 調剤薬局10年
  • 【経験診療科】注射剤・内科・整形・皮膚科・小児科
  • 【勤務の希望】月曜〜土曜日まで勤務可能
  • 【その他】管理薬剤師経験あり
パンダ薬局社長
パンダ薬局社長

かなりのベテランだなぁ。

抗がん剤も出る病院前店で活躍してくれそう!

土曜日も出てくれるから、社員を休ませられるな。

年齢が上がってくると警戒されやすいものの、管理薬剤師経験もあり、オールマイティに業務をこなせることが予想できます。

キャラクターさえ問題なければ、継続して戦力として期待され、契約更新もあり得るでしょう。

調剤薬局経験3年 | Cさん(20代女性)

  • 【経験年数】調剤薬局3年
  • 【経験診療科】病院前・耳鼻科
  • 【勤務の希望】週3日程度
パンダ薬局社長
パンダ薬局社長

ちょっと経験が少ないけど、投薬をメインに受け持ってもらえばいいかな。

若いし素直だろうから、入れてみようかな。

週3日はちょっと少ないから、4日にしてもらえないか交渉しよう。

調剤未経験 | Cさん(20代男性)

ここまでくるとなんとなくわかると思いますが、未経験の派遣薬剤師だと以下のような状況になると考えられます。

  • 20代男性Cさん
    • 【経験年数】0年
    • 【経験診療科】なし
    • 【勤務の希望】とくになし
    • 【その他】薬科大学新卒
パンダ薬局社長
パンダ薬局社長

未経験!?

大丈夫かなぁ?

今は即戦力が欲しいからなぁ…

人でが欲しいのに、教えるとなると逆に人手が必要になってしまうな…

調剤未経験 | Dさん(30代女性)

  • 30代女性Dさん
    • 【経験年数】0年
    • 【経験診療科】なし
    • 【勤務の希望】とくになし
    • 【その他】元MR。調剤薬局へ転職希望。紹介予定派遣希望
パンダ薬局社長
パンダ薬局社長

未経験!?

あ、でもうちの会社を下見希望なのね。

お互いにマッチすれば正社員として入社してくれるってことね!

それならウェルカム!

Cさんの受け入れは難しいけど、Dさんは受け入れてもらえる可能性が高いことがわかると思います。

「派遣」と「紹介予定派遣」の違い

CさんとDさんの違いはわかりますか?

未経験は同じですが、「派遣」なのか「紹介予定派遣」なのかの違いです。

紹介予定派遣は、わかりやすく言えば「お試し就業」です。

契約期間の間に、薬剤師は受け入れ先の会社や薬局の雰囲気を確認します。

薬局側は、薬剤師の働きぶりを確認します。

お互いを判断し、直接雇用になるかを決定します。

一方のCさんは、契約期間の間、労働力を提供する純粋な派遣契約です。

派遣という働き方はマッチングである

当たり前ですが、薬剤師に限らず派遣労働者は、受け入れ先があって初めてお仕事をして時給をいただくことができます。

よって、自分が派遣薬剤師として提供できるものが、受け入れ先薬局のニーズにマッチしていないと入れてもらえません。

未経験で派遣薬剤師をやるなら紹介予定派遣

派遣薬剤師を依頼するのは、人手が足りない店舗です。

そのため、一通りの調剤薬局の仕事内容について把握している人が望ましいのは言うまでもありません。

内科は当然として、小児科や精神科などの診療科の経験もあると更に好感されます。

一方で、Cさんのように、「調剤薬局未経験」となると、どうしても「教える手間がかかる」ということで敬遠されがちです。

そもそも派遣の受け入れを承諾してもらえない可能性も高いです。

でも、Dさんのように紹介予定派遣であれば、最終的に正社員もしくは、パート社員になり、自社で雇用できる可能性があります。

そのため、薬局側としても受け入れる意欲を持ちやすいです。

最初から派遣を目指さないほうが簡単

紹介予定派遣であれば、通常の派遣よりも薬局に入り込みやすいと説明しました。

ただ、それは案件がある場合です。

地域によっては紹介予定派遣も使ったことがない会社が多く、あくまで正社員かパートの2択しかないところもあります。

調剤薬局に正社員やパート薬剤師で入ること自体は簡単なので、案件を血眼になって探すくらいなら、一旦社員として働くほうが簡単です。

会社としても、入社してもらいたいので、最初の配属店舗だけは希望を聞いてもらえる可能性が高いです。

内科や病院前などスキルの身につきやすい薬局に入って1年も仕事すれば、とりあえず一通りのことはできるようになると思います。

そこから派遣薬剤師として活動しても遅くはないでしょう。

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